豪龍久保。西麻布の住宅街の片隅にひっそりとその店はある。店名は、店主の久保豪が自身の名前「豪」と息子龍之介の「龍」から取り付けた。豪流(オレ流)や縁起の良い龍虎の意味合いも込めている。日本の豊かな四季を感じられるような食事を供するために、素材の多くは久保が自ら全国各地の産地へ赴き、生産者と直接話しをして納得がいったものだけを仕入れている。
良い料理を作るためには、良い食材が欠かせない。そのためにも漁師や農家など生産者との関わりをとても重視していると言う。メニューは基本的に四季毎の変更となっているがお造りなど、手に入る食材の状態によっては日々変えている。最近ではSNSのおかげでリアルタイムに生産者と連絡を取り合い、良い食材が取れたとの連絡が入ればその都度、料理に反映させている。久保は生産者に良いことも、悪いことも素直に伝えている。それがお互いの信頼関係を強化させ、より良い食材・料理へとつながっている。
久保は大学卒業後に調理師学校へ通い、料理人になったのは27歳と遅い。その後、いくつかの店で修行をしたのちに自身の考える最高の料理を追求するために2013年5月に豪龍久保を開店させた。そして、開店してわずか7ヶ月後の同年12月にミシュランガイドの二つ星を獲得し、現在まで4年連続でミシュランガイドの二つ星を獲得している。しかし、最初から順風満帆というわけではなかった。開店から半年くらいはひと月に数えるほどしか客が来なかったこともある。また、ミシュランガイドの星を取ったからといっても久保が有名店で修行して来たわけでもなく、名前が売れていなかったので客が急に増えることもなかった。そのような苦難の時代にも、一切手を抜かずに、料理に真摯に向き合ってきたからこそ、豪龍久保の今の名声があるのだろう。
料理を盛る器は、古い物だと400年前、明末の古染付の皿や、80年前の京焼、春海商店がバカラに特別に注文して作らせた春海バカラ、魯山人の器や高級ワイングラスなど、久保のこだわりが随所に生きている。月に一回は京都に行き道具屋を回り集めているそうだ。
NIIZAWAやNIIZAWA KIZASHIを置いているのは、7%まで精米した酒の味わいも然ることながら、アーティストラベルの素晴らしさも気に入ってとのこと。最近では、日本酒では最高級ゆえに目を引くようで、舌の肥えた香港やシンガポールからの客が酒のリストを見て「ここにはNIIZAWAを置いているのか」と注文をすることもあるようだ。豪龍久保のコンセプトを一言でいうなら「人」だと言う。生産者も人であり、客も人、その両者を最高の料理でつなぐために豪龍久保がある。久保はいま次のステージへ向けて新たな挑戦をしようとしている。豪龍久保の進化が楽しみだ。
住 所:東京都港区西麻布2-15-1 三澤ビルB1
ご連絡先:050-3188-0535
営業時間:18:00~24:00(最終入店21:00)
定休日: 日曜、祝日
URL:http://www.goryu-kubo.com
文・写真 鈴木大輔